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第3回レギュラトリーサイエンス学会学術大会について

平成25年(2013年)9月6日(金)・7日(土)の2日間、第3回レギュラトリーサイエンス学会が一橋大学一橋講堂(千代田区学術総合センター内) において開催された。
今大会のテーマは、「新しい科学としてのレギュラトリーサイエンス」として11題のシンポジウムを中心として開催された。

  • 薬事法改正のCritical Appraisal
  • イノベーションの時代を担う医薬プロフェッショナルの人材育成
  • Benefit-Risk評価の実際
  • 医薬品開発と審査の“見える化”を考える−レギュラトリーサイエンス研究のためのモデリング&シミュレーション−
  • “効能効果”と“有害な作用”の比較衡量のあり方−人文社会科学と医学薬学の融合−
  • iPS細胞由来臓器細胞を用いた薬物安全性評価の展望と課題
  • コンパニオン診断薬の現状と課題−医療側、診断薬企業、医薬品企業から見た課題と今後の対応−
  • 小児医薬品開発の方向性−臨床試験の問題点・現状及び取り組むべき課題−
  • 医薬品の製造販売後安全対策等への電子医療情報の活用
  • 高齢化社会を支える医療機器開発の最前線とレギュラトリーサイエンスの役割
  • 医療機器レギュラトリーサイエンスの人材育成−薬事法改正を受けて−

講演の一つとして小児適応拡大の必要性が議論され、小児臨床試験の実施が困難なことや疾患別患者数(症例)が少ない 等の課題に対して適応拡大のための根拠となる情報集積のための方策が議論されていた。
また、医薬品開発と審査の“見える化”としてモデリング&シミュレーション(M&S)手法の活用について発表があった。
M&Sは、医薬品開発の各段階で得られた知識や経験測などの情報(モデル)を集約し、定量的に評価や予測し、類推解釈 よりもさらに進んだ模擬試験的解釈(シミュレーション)を目的として欧米を中心に活発化している。日本においてもその活 用の重要性が注目されているが、モデル(情報)として日本人を対象とした事例が少なく、薬物動態(PK)や薬力学(PD)に 関する解析知識、臨床統計処理知識やプログラミング技術等のスキルを持った人材も不足しており、活用のためには種々 の課題解決が求められていた。
最近注目させているヒト胚性幹細胞(ES細胞)や人工多能性幹細胞(iPS細胞)を用いた創薬応用の可能性に関して議論がされた。分化誘導されたiPS細胞は複数の分化誘導過程を経るため再現性や成熟度が不十分で細胞機能が初代培養肝細胞に及ばないとされているが、分化誘導法の改良や日本製薬工業協会によるヒトiPS細胞応用安全性評価コンソーシアムの発足(2013年7月8日)等、幹細胞の安定した供給、細胞を用いた安全性評価法の標準化が進んでいるとのことであった。
なお、通常国会で時間切れとなった薬事法の改正審議は、平成25年秋の臨時国会での成立を目指すこととなっているが、医薬品と並んで医療機器と再生医療製品についても審議されることから重要な改正になるものと思われる。
大きな改正点としてフェーズ1及び2において安全性が確認され有効性が推定されればファーズ3を省略し、市販後調査に重点を置くといった迅速承認を目的とした改正も審議されると思われるが、このファーズ3の省略によりリスクとベネフィット比較の意義が曖昧となるのではないかと言った指摘もある。この様な種々の課題解決のために、レギュラトリーサイエンスは、科学の成果物や新技術を最適な形で社会に適合させるために根拠ある評価や判断を行っていくためのサイエンスとして益々重要な学問になるものと思われる。

(2013年9月6日〜7日開催の第3回レギュラトリーサイエンス学会より)


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